モノづくりのプライドを
カタチに。
『ボロノイ分割』が会社のビジョンと一致
2017年、三栄建設は事業拡大に伴い、鉄構事業本部を大阪府八尾市から大阪市大正区に移転しました。そして、新たな活動場所としてだけでなく、シンボルとしての新しい社屋をつくるため、この鉄構事業本部 新社屋建設プロジェクトを立ち上げました。
そこで課題となったのが、これまで以上に部署間や社員同士のコミュニケーションを生み出す仕掛けづくりです。
現場作業員のオフィス、打ち合わせスペース、設計部門や管理等の内勤部門、ゲストエリア、そして、食堂などの共有エリア、各エリアをどのようにつなげるか。
ラーメン構造(長方形に組んだ骨組みの、柱と梁との各接合箇所(角部分)を剛接合した構造形式)など、従来の構造に当てはめることも一つの選択肢ではありましたが、この新社屋建設プロジェクトには、鉄を扱う技術者集団として、あらたな建築にチャレンジしたいという想いがあり、デザイン設計を担当して頂いた竹中工務店様との打ち合わせの中で、どのような企画がベストかを幾度も話し合いました。
そこで浮上したのが、『ボロノイ分割』。
ボロノイ図とは・・・平面上に設定された「母点」と呼ばれる複数の座標をもとに、どの母点に最も近いかによって平面上の座標空間を分割(ボロノイ分割)することで作成される図
このように各部署のオフィス同士が既定枠を超えて多様に結びつくよう、立体的、多面的な関係を生み出す幾何学を用いた手法で設計することとなったのです。
ボロノイ構造は通常の平衡・水平・垂直の枠構造とは違い、骨組みが不規則に結合することで多様な形の空間を構築することが可能となります。
さらにデザインの自由度が高いことが決め手となりました。
この構造は、社員数が増え、専門部署同士を多面的に結びつかせるこれからの三栄建設のビジョンにフィットしたプランニングだと考えました。
しかしながら、問題点が浮上しました。
各部署に求められる面積を満たしながら、複雑な形状の部屋をどのように配置するのが最適か。
まるで難解なパズルを解くような膨大な時間を要するプロジェクトが始動しました。
それは、私たちの「鉄のミュージアム」を創り上げる挑戦でもありました。
BIMによる設計から施工までの一貫管理
『ボロノイ分割』は、通常の建造物とは違って、不規則なフレーム構造となります。
斜めの鉄骨や壁が多いデザインとなるので、2Dの平面図や断面図で設計をすべて表現することは不可能です。
そして、構造は違えど、耐震強度は必要なので、普通の建築物と同じように造り上げていくことを求められるのです。
プロジェクトでは、事前に綿密な計画と検討を繰り返し、その構造を実現するために正確な数値を割り出し、BIMシステムにデータを落とし込んでいきます。
ここでは異なるベンダーのBIMソフトを連携しながら設計段階から施工段階までデータをシームレスに繋いでいく手法をとりました。
これはBIM先進国であるアメリカでさえも、施工までデジタルデータを活用している例は少なく、世界的に見ても前例の少ない試みでした。
また、BIMによって全ての製作内容を記録したことで、常に各部門担当が情報共有できる状態で進行できたことも重要なポイントとなりました。
検討する際には、コスト、時間、作業の難易度のバランスも考慮できる”経験”が必要であり、
三栄建設には今までに培ってきた経験値があったからこそ、このような最先端の技術を用いて進めることができたのです。
『鉄のミュージアム』で鉄へのこだわりを具現化
ーこれまで培ってきた鉄へのこだわりをこの新社屋に注入しようー
構造部材の設計・製作・施工については、鉄骨加工を強みとする三栄建設が担当しました。
今回のプロジェクトは工場が隣にあるので、
通常であれば鉄骨を現場搬入可能なサイズに分割し、現場で溶接するところ、
搬入までの工程を大幅カットでき、その分、精度を高く維持することが可能となりました。
私たちは、このプロジェクトで、他に類を見ない複雑な製作にも積極的に向き合っていきました。
鋳鋼を使った柱の接続部、細い鋼管を工場で格子状に組んだクロスハッチブレース、ボロノイ耐震壁、柱と鉄骨基礎梁を繋ぐコンパクトパイルキャップなど、鉄を扱う技術者集団として、常に妥協のない選択をし続けました。
しかし、『ボロノイ分割』の設計はその複雑さゆえに、通常の建造物とは異なる点が多々ありました。
通常なら柱を据付してからの梁の工程も、ここでは梁を通してから次に柱を据付けるなど、特殊な構造故の判断が求められました。さらに、同じ建物なのに部材が各所によって異なるため、ジョイントには高度な溶接テクニックを要するなど、想像以上の計画性、技術力、経験値が必要となったのです。
そういった幾多のハードルをクリアし、2020年 春、「鉄のミュージアム」は完成しました。
この建物は関わった一人一人のものづくりのプライドが結集した「作品」となりました。
私たちは、この「作品」を通じて、社員のコミュニケーションをより活性化することで、各事業の精度が引き上がり、会社がさらに発展していくことを望んでいます。
今回の挑戦は、三栄建設の未来を創造するプロジェクトとして、社史に深く刻まれました。
ギャラリー
-
全景
-
従業員エントランス (1)
-
従業員エントランス (2)
-
従業員エントランス (3)
-
ゲストエントランス (1)
-
共用スペース (1)
-
共用スペース (2)
-
共用スペース (3)
-
従業員エントランス (夜間)
-
外観 (夜間:1)
-
外観 (夜間:2)
-
全景 (夜間)